たかがリューシの文才で

歌えない・踊れない 悲しい”社畜”の物語

デートの準備をしよう

前回のあらすじ

 

Monkey Business好きの女性をダメもとでデートに誘ったらOKを貰えた

 

以下本文

 

承諾の文面を見て私は小躍りをしながら快哉を叫んだ。

どうだ。見たか。マッチングアプリ攻略サイトの「10日くらいはメッセージのやり取りをしてからデートの申し込みをしましょう」とか大嘘だったぜ。

あんなもんあてにならん。やはり信じられる者は己のみ。

今後は無頼の精神で生きていくぞ!と決意をした。

 

……さて、OKの返事をもらったはいいが、はて、ここからどうしよう。

けっこう先走ってデートの誘いをした自覚はある。なので、拒絶→即破局の即死コンボまではいかなくとも、「会うのはもう少しメッセージのやり取りをしてからにしませんか」くらいの躱され方はするだろうと考えていたので、後のことをなんにも考えていなかった。

 

え?デート?デートって、何をすればいいんですか?

 

もちろん俺は20代のうちにデートをしたことがない4割側の男性である。なので「軽くお茶でもしませんか」と誘ったものの、「お茶」とは何か、「軽く」とはどういうことなのか、いまいちピンと来ていなかった。

 

仕方がないのでマッチングアプリ攻略サイトに頼ることにした。

無頼の精神はどうなってんだ無頼の精神は。

 

なになに?『当日の服装はどうするか?初めて会う場所はどうするか?何時に待ち合わせ場所に集合するか?最初の挨拶はどうするか?どこのお店を予約するか?話題が無くなった場合はどうするか?相手の趣味などのプロフィール情報を覚えているか?どのタイミングでお会計をするか?』

 

くっそめんどくせえ……

やばい。さっそく眩暈がしてきた。いや、一度に多くのことを決めようとするものではない。まずは昼に会うか夜に会うかを決めよう。OKしてくれたUさんの寛大な精神に報いなければ!

 

『無難なデートは昼間のランチを1〜2時間一緒にすることですが、お互い積極的だったり仕事に忙しかったりする場合は、お酒も入って気軽に喋れる夜もおすすめです。

特に社会人同士の場合最初のデートは仕事終わりに短時間の夜デートを設定して、「次はもっとゆっくりできると良いね」という形で繋げた方が少しずつ関係を深めていけてGOODです。』

 

と、読んではみたものの、俺の場合は昼一択だろう。俺はそもそも酒が飲めないので、居酒屋という選択肢は最初からない。

それにディナーはランチより値段が高い。この点も重要だ。

そう。俺は「デート費用は男が出すもの」という旧時代的で低俗な価値観には断固異議を唱えるものだが、ただでさえ"実家暮らしの自立していない男"の評価に甘んじている身である。なので少しでも見栄を張りたいという浅ましい気持ちから、マッチングアプリの「初回デートの費用はどちらが払う?」の項目を「男が全部出す」にしていたのだ。

ああ!なんと情けないことだ。でも仕方ないだろ。

実家が結局一番楽

何もせんでもご飯出てくるし

お風呂あったかい 布団あったかい 

昼に起きて朝に寝る生活

 

そういう訳だから、吐いた唾は飲み込まねばならない。でもディナーは高いし、お酒も飲めないから、ランチでごまかそうっ……ってことだ。いやいっそ、もう言葉通りの「お茶」でいいのでは?もっと安上がりだ。だいたい、今時の飲料高すぎないか?タピオカやらスタバやらが広く受け入れられているのが分からない。たかが味のついた液体の分際で牛丼やミラノ風ドリアより高いっておかしいだろ。命への感謝はないのか?(モテない価値観)

 

ということで、直近の週末の昼に1時間くらい茶店で茶をしばきながらお話しようということになった。エリアはお互いに都合のいい池袋。前述のモテない価値観からご推察される通り、俺は茶店なんてなんもわからんので「池袋 カフェ マッチングアプリ」で検索検索ぅして見繕った候補の店のURLをいくつかメッセージで送り付けて「リンク先開けませんでした」と返されるなどして、そこには既にスマートさの欠片も見いだせなかったが、とにかく時と場所を決めた!

 

やれやれ。一番大変なところを乗り越えた。

後は当日ちゃんと会えるか、だ。俺と同じくマッチングアプリと格闘している会社の同期が「今までにデートの約束を4人と取り付けたんだけどよ、4人とも当日体調不良になったんだよな~」などと恐ろしいことを言っていたのが不安だが、Monkey Business DP赤クリアできる健脚をお持ちのUさんがそうそう体調を崩されることもあるまい、と思うことにする。

ドタキャン。恐ろしい。それなりの覚悟と準備をもって当日望むのだから、それを裏切られるのはどれほどの悲しみだろうか。向こうは俺の写真を見ているから、当日「見た目が好みじゃなかったんで帰りました」という、立ち直れなくなるレベルの惨劇はないはずだけど、それでも。

だから、約束をしたからと安心するのではなく、当日まで楽しいやり取りを継続していこう。ただ、あんまりここで話のネタを使い切ってしまうと、デート当日に話すことがなくなってしまうのではという懸念もある。

なので、俺はどういう話題がありそうかを今一度把握しておこうと思い、Uさんのプロフを改めて確認していった。そうして「趣味」のコミュニティを見ると、なんと「麻雀好きです」があるじゃないか!これはいい。DDRベルセルク麻雀。マジで趣味が合うな。流行りの雀魂とかやってるんだろうか。

やはり、Uさんの顔写真がないというのが唯一にして最大の不安ではあるが、結構盛り上がるんじゃないかという気がしてきた。これは楽しみになってきたぞ。

 

さて他には……「ライフスタイル」のコミュニティもいくつか入っているようだな。今までは趣味ばかり気にしていたが、直接会って話をして、親密になっていくことを目指すのであれば、こういうところも把握しなければ。

 

どれどれ……

「ピアス開けてます」

へーそうなんだ。いや、俺自身はアクセサリーはおろか髪すら染めたことのない洒落っ気のなさだが、ピアスについては別に何とも思わない。どうぞお好きにという感じだ。

寧ろわざわざ断るくらいのことなんだろうか?「親から貰った体に穴を開けるなんて!」という価値観の人もいるからなのか。ちょっとお洒落に気を使う女性なら大体開けてんじゃないの(偏見)。自分の身体なのだから本人の勝手であろう。

 

「ピアス拡張しています」

いやいやいやいやいやいや!

待て待て待て待て待て待て!

待て!

 

それは、それはちょっと聞いてなかった!聞いてなかったぞ!

 

ピアス穴の拡張。どんなもんか興味のある読者諸兄は画像検索してほしい。私から直接画像を貼りはしない。ただ、俺は一度生で見たことがあるんだが、結構ショッキングなのでくれぐれもご注意を。

あれは忘れもしない、二十歳の誕生日のころに行った運転免許合宿。大学同期3人と新潟に行った時だ。機械系のくせして車も運転も全く興味がない俺は一人だけAT限定のコースにして、ここでも協調性のなさを遺憾なく発揮していたのだが、そこにいたのだ。

ピアスめっちゃ拡張しているDQNが!

そもそも風貌全体がもう、「DQNで御座い」って感じだったのだが、一際目を引いたのが500円玉くらいはあろうかというその拡張ピアス。予備知識なしに限界にまで拡張されたそれを見てしまった俺は、人の耳たぶはここまで拡がるもんかと震え上がった。高速教習よりも怖かった。

 

あれから10年が経とうとしているが、今でも忘れられない衝撃を俺の心に残している。

それ以来、拡張している人を目にすることはなかったんだが、そうきたか。

そうきたか~。

Monkey Businessの時点でタダモノでない感じはしていたが、俺のイメージする"普通の女性"(ほぼ想像だが)とは大分異なっているだろうことがいよいよ確信できた。

Uさんは文章も丁寧で絵文字も使わず、悪い人ではないことはまず間違いないだろうが、美人だろうかとか巨乳だろうかとかそういうのとは別のベクトルで(一体どんな人が来るんだ)という不安が強くなってしまった。

いや、まあ、本人の勝手なんですけどね?

 

S君に「お陰様でデートの約束をするところまでは漕ぎ着けられたんだけどよ……」と相談するも「おお、まあ頑張れ。報告楽しみにしてるわw」と完全に面白がっている。

コイツ……もう頼りにしないからな!今度こそ俺は無頼の精神で生きていく。

 

まあ一言に「拡張している」と言っても程度はある。10年前のDQNのように500円までいかれると正直ガチビビりしてしまうが、1円玉くらいまでなら、まあ、なんとか?なるかもしれん。

そうだ。29歳も後半にしてようやく初デートの約束を取り付けたのだ。腹を括って、非モテ人生では味わえなかったドーンときてガシャーンとやられる感覚を味わおう。

たかが耳たぶの穴ポコごときが、俺のモテモテライフの落とし穴になってたまるか!

 

ということで、俺はめげずにUさんとデート当日まで楽しくやり取りを継続していった。

そして迎えた。

当日を!

 

次回!

「デートをしよう①」

 

三月下旬のデート当日。その日は「まだまだ寒い日が続くし、服装はS君のコーデでいいわな」とタカを括っていた俺を嘲笑うかのように今年最初の暖かい日となった。おいおい、S君のコーデはガチ冬服だぞ!俺はS君にラインで泣きつくのであった。

 

いよいよデート編、ようやくここまでたどり着けたのは皆様の温かいコメントといいねの御蔭です。今月からしばらく残業が減る、らしいので平日も書き進めていきたい、とは思っています、はい。